シュプルのおはなし

雨宮諒(2004.04)電撃文庫 ISBN:4840226601 【ライトノベル】 おかあさんが仕事に出かけているあいだ、シュプルはおじいちゃんの家に預けられる。ある日、物置部屋で木箱を見つけたシュプルは確信した、「これはおじいちゃんの宝箱だ!」――幼い子供が想像の…

平井骸惚此中ニ有リ 其貳

田代裕彦(2004.04)富士見ミステリー文庫 ISBN:482916252X 【ミステリ】 骸惚先生探偵譚、今回のお題は〈嵐の山荘〉でございます。編集者・香月緋音嬢のお誘いで、山奥のホテルへ意気揚々と避暑に向かった骸惚先生ご一行。そこにいたのは不愉快な性格の華族…

動物園の鳥

坂木司(2004.03)東京創元社 ISBN:4488012965 【青春小説/ミステリ】 鳥井と坂木の友情三部作、完結編。 男性同士の友情がボーイズラブの文脈で描かれている点で妙な話題を呼んだ連作だが、個人的には鳥井、あるいは鳥井を中心とするコミュニティの加入員…

あやまち

沢村凛(2004.04)講談社 ISBN:4062123436 【ミステリ/恋愛小説】 ちょっとした縁で知り合い、つきあい始めた二人に付き纏う異相の男。わたしは次第に不安に包まれていった…… 『ヤンのいた島』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した著者が大作『瞳…

九月の四分の一

大崎善生(2003.04)新潮社 ISBN:4104594016 【恋愛小説】 どうしてこれほど記憶に残っていないのか不思議に思えるほど何ひとつ内容を覚えていない『パイロットフィッシュ』(著者の名誉のために断っておくが、『パイロットフィッシュ』は初の長編小説であり…

『犬は勘定に入れません』コニー・ウィリス(2004.04)早川書房 ISBN:4152085535 『奇術師』クリストファー・プリースト(2004.04)ハヤカワ文庫FT ISBN:4150203571 『動物園の鳥』坂木司(2004.03)東京創元社 ISBN:4488012965 『百万の手』畠中恵(2004.…

最近の読書

更新を休んでいたからといって、何も読んでいなかったわけではない。たとえば小路幸也の第二長編『高く遠く空へ歌ううた』や斉藤純の官能小説集『ただよう薔薇の午後』については、時間が空けば感想を書いておきたいと思うし、井上一馬の小説集『モンキーア…

高く遠く空へ歌ううた

小路幸也(2004.04)講談社 ISBN:4062123533 【エンタテインメント】 『空を見上げる古い歌を口ずさむ』で第29回メフィスト賞を受賞した新鋭の最新長編。 基本的には前作の設定を踏襲したファンタスティックな物語だが、残念ながら〈善と悪の闘い〉というテ…

モンキーアイランド・ホテル

井上一馬(2004.01)講談社文庫 ISBN:4062739259 【ノベル/ミステリ】 ボブ・グリーン『チーズバーガーズ』『アメリカン・ビート』などを訳した翻訳家が初めて手掛けるミステリ・タッチの作品集。ふたつの中編を収録した書き下ろし文庫。 表題作「モンキー…

神の手

望月諒子(2004.04)集英社文庫 ISBN:408747891X 【ミステリ】 文芸誌編集長・三村のもとに送られてきた原稿は、かつて突然姿を消した作家志望の女性が書いた小説と同じものだった。一体裏で誰が何を狙って動いているのか? 破壊的な気迫が内包された、稀有…

響ヶ丘ラジカルシスターズ

井上剛(2004.03)ソノラマ文庫 ISBN:4257770295 【ライトノベル】 『マーブル騒動記』で第三回日本SF大賞新人賞を受賞した著者の第三長編。響ヶ丘音楽学校の新入生三人が悪の結社〈征服座〉と闘うコメディ。 第二長編『死なないで』は印象に残る文芸的秀…

サスペンス・ミステリ

最近、〈サスペンス・ミステリ〉と銘打たれた新刊をほとんど見かけなくなってしまった――あるいは、女性作家が書いたサスペンス・ミステリを。80年代後半から90年代前半にかけて精力的にサスペンスの新作を発表していた小池真理子、山崎洋子、青柳友子、森真…

イニシエーション・ラブ

乾くるみ(2004.04)原書房 ISBN:456203761X 【ミステリ】 『塔の断章』に続くタロット連作第二弾(カバー写真にはタロット・カードが写っているし、『塔の断章』の登場人物が顔を出してもいるので――確認はしていないが、たしか同じ名前の人物が登場していた…

『響ヶ丘ラジカルシスターズ』井上剛(2004.03)ソノラマ文庫 ISBN:4257770295 『精霊海流』早見裕司(2004.03)ソノラマ文庫 ISBN:4257770309

帰ってきたアルバイト探偵

大沢在昌(2004.02)講談社 ISBN:4062122901 【ミステリ/エンタテインメント】

ルピナス探偵団の当惑

津原泰水(2004.03)原書房 ISBN:456203758X 【ミステリ】 ミッションスクールのルピナス学園に通う吾魚彩子とその仲間たちが三つの事件に挑む連作本格ミステリ。講談社X文庫ティーンズハートで上梓された二作品を改稿し、さらに書き下ろしの新作を追加。 …

さよならの代わりに

貫井徳郎(2004.03)幻冬舎 ISBN:4344004906 【ミステリ】 劇団〈うさぎの眼〉に所属する新米役者の和希は、可愛らしくもどこか謎めいた奇妙な女性に出会った。彼女の正体は? そして彼女の奇妙な依頼は何を意味するのか? 筋を辿る楽しさを味わえる作品。だ…

ジェシカが駆け抜けた七年間について

歌野晶午(2004.02)原書房 ISBN:4562037385 【ミステリ】 『安達ヶ原の鬼密室』と同様の構成という印象の、軽いトーンの小品。メイン・トリックに何が使用されているかは簡単に見当がつくし、切れ味もそれほど鮮やかとは言い難く、むしろ途中、男性二人の視…

ミステリマガジン2004年5月号

小熊文彦の短編が載っていたので購入する。その作品「赤ちゃんは知っている」は如何にも小品で、とりたててどうこう言えるほど印象的な内容ではない。しかし、〈ハヤカワ・ミステリワールド〉から刊行された奇妙な短編集『天国は待つことができる』(その中…

二人道成寺

近藤史恵(2004.03)文藝春秋 ISBN:4163225803 【ミステリ】 歌舞伎役者の妻を意識不明の重体にした不審火の背景には何があるのか。歌舞伎をモティーフにした連作ミステリ*1の第四弾。 堪能した。奇を衒った趣向やトリックを好むマニアには不評を買うかも知…

『猫舌男爵』皆川博子(2004.03)講談社 ISBN:4062123274 『あやめ 鰈 ひかがみ』松浦寿輝(2004.03)講談社 ISBN:4062122057 『黄昏の百合の骨』恩田陸(2004.03)講談社 ISBN:4062123320 『さよならの代わりに』貫井徳郎(2004.03)幻冬舎 ISBN:4344004906…

黒真珠の瞳 凶眼リューク

草上仁(2004.02)エニックスEXノベルズ ISBN:4757511329 【ミステリ/ファンタジー】 突出した推理能力の持ち主であるため〈凶眼〉と渾名されるヒト族の探し屋リュークは、エルフの未亡人から、彼女の夫を殺した犯人を突き止めて欲しいと頼まれる。犯人は…

DZ

小笠原慧(単行本刊行2000.05)角川文庫 ISBN:4043705018 【SF/ミステリ】 第20回横溝正史賞受賞作*1。感心した。ハイレベルな秀作だと思う。 と先に書いておいて本題に移るが、横溝賞を受賞してはいるけれど、本書の実態はミステリの構成を借りたSFで…

エンドコール メッセージ

山之内正文(2002.08)双葉社 ISBN:4575234451 【ミステリ】 再読。小説推理新人賞受賞作「風の吹かない景色」、受賞第一作でいきなり日本推理作家協会賞(短編部門)の候補になった表題作「エンドコール メッセージ」、ほか二編を収録した期待の新鋭のデビ…

いじん幽霊

高橋克彦(2003.12)集英社 ISBN:4087746801 【時代推理】 〈完四郎広目手控〉シリーズ、第三弾の舞台は幕末の横浜。外国人居留地が開設され、西洋と日本の文化の断層がダイナミックに立ち現れる一方、薩摩・長州・水戸の各藩を中心に一触即発の空気が蔓延し…

文学賞メッタ斬り!

(↓某所からリンクされてしまったので念のため書いておきますが、まだ最後まで読んでません。お間違えなきよう) 途中まで斜め読みした印象は、そこそこは楽しく読めるものの、特に目新しい視点や情報は含まれていない本であるということ、そして小説は矢張…

塩の街

有川浩(2004.02)電撃文庫 ISBN:4840226016 【ライトノベル】 人体が塩の柱と化す奇病(?)に侵された世界の物語。第10回電撃ゲーム大賞受賞作。 新井素子『ひとめあなたに……』やP・D・ジェイムズ『人類の子供たち』などの系譜に連なる世界滅亡小説かと…

『見知らぬ侍』岡田秀文(2004.01)双葉社 ISBN:4575234893 『大相撲殺人事件』小森健太朗(2004.02)ハルキノベルズ ISBN:4758420319 『殺人の追憶』薄井ゆうじ(2004.02)アートン ISBN:4901006649 『ふつうの学校2』蘇部健一(2004.02)講談社青い鳥文庫…

チベット

河出書房新社の今月の新刊、ジャムヤン・ノルブ『シャーロック・ホームズ 失われた冒険』は〈ホームズのチベットでの大空白時代の再現を試みた〉小説だそうで、解説を読むとラドヤード・キプリング『少年キム』(晶文社)との二重パロディにもなっているとい…

期待の若手

上述の松尾清貴は27歳。彼が作品の舞台に選んだのは大正の世で、その時代の雰囲気を達者に描いていると思うが(殊に会話文)、同時に「現代の若手作家が書き上げた小説」という印象も強烈に感じさせる。『彼女は存在しない』の浦賀和宏、『さよなら妖精』の…