期待の若手

 上述の松尾清貴は27歳。彼が作品の舞台に選んだのは大正の世で、その時代の雰囲気を達者に描いていると思うが(殊に会話文)、同時に「現代の若手作家が書き上げた小説」という印象も強烈に感じさせる。『彼女は存在しない』の浦賀和宏、『さよなら妖精』の米澤穂信、『ア・ハッピー・ラッキー・マン』の福田栄一、『不思議じゃない国のアリス』の沙藤一樹など、「次に何を書くか」ということ自体がスリリング――と感じさせる、面白い書き手が増えたものだと思う。