2004-09-01から1ヶ月間の記事一覧

頁数の少ない二冊の本を読了する。北森鴻『螢坂』(講談社)は『花の下にて春死なむ』『桜宵』に続くシリーズ第三弾。ミステリとしては異色の構成を持つ作品が多く、もとより本格ミステリとは全く無縁の内容になっているが、読み物としてはたいへん上質で、…

津原泰水の『綺譚集』(集英社)を読了したが、それにしても(敢えて誤解を恐れずに言えば)津原泰水はつくづく因果な物書きであると思わずにはいられない。この作家にこれほど文章力が無ければ、エンタテインメント作家としてもっと無難に評価されていただ…

藤村いずみ『あまんじゃく』(早川書房)読了。巻末短編のタイトルが「セラー」になっているのは、同じ殺し屋を主人公に据えたローレンス・ブロックのケラー・シリーズに対するオマージュなのかも知れない。と、そんなことはさておき、その最終短編(という…

山口雅也『PLAY』(朝日新聞社)、浅暮三文『嘘猫』(光文社文庫)を読了。『嘘猫』は卑怯なほどリリカルな作品世界に驚かされるが、淡々とした素直な文章で描かれているので、読者の感情に直接訴えてくるような筆致にも嫌らしさが感じられない。まさに…

雫井脩介『犯人に告ぐ』(双葉社)読了。〈劇場型捜査〉という斬新な設定を採用した時点で、この物語は従来の警察小説とは異なる面白さを創造し読者に提示しなければならなかったということを、果たして作者は自覚していたか。結局、劇場型捜査という設定の…

麻耶雄嵩『螢』(幻冬舎)読了。作中にひとつ、ありふれたトリックの裏表を綺麗にひっくり返して使ってみせたような秀逸なアイデアが盛り込まれており、そのアイデアだけでもこの作品は賞賛に値する。とはいえ中盤までの展開がどうにも退屈で、絶賛とまでは…

最近読んだ本

『追憶のかけら』貫井徳郎(2004.07)実業之日本社 ISBN:4408534609 『セカンド・サイト』中野順一(2003.05)文藝春秋 ISBN:4163218807 『野を馳せる風のごとく』花田一三六(1996.07)角川文庫 ISBN:4044176019 『青い繭の中でみる夢』山之内正文(2004.07…

山本弘『審判の日』(角川書店)を読み終わった直後だったので、なんとなくさっさと買ってさっさと読んでしまった村上春樹の『アフターダーク』(講談社)。そこそこに興味深い内容でそこそこには楽しめたものの読後感は中途半端で、この程度の要〈読み解き…