山口雅也『PLAY』(朝日新聞社)、浅暮三文『嘘猫』(光文社文庫)を読了。『嘘猫』は卑怯なほどリリカルな作品世界に驚かされるが、淡々とした素直な文章で描かれているので、読者の感情に直接訴えてくるような筆致にも嫌らしさが感じられない。まさに好印象の作品といったところ。『PLAY』は四編を収録した作品集で、佳作集と呼ぶことも出来ようが、正直なところ以前どこかで読んだような感のある作品ばかりで、インパクトは薄い。山口作品は「妄想に憑かれた人々の帝国」を描くと抜群に面白いが、「妄想に憑かれた人が暮らす普通の世界」に留まると格段につまらなくなるような気がする。装丁は「なんだかなぁ」といった感じ。
 予想よりも面白い堂場瞬一『焔』(実業之日本社)は中盤を過ぎたところ。藤村いずみのデビュー作品集『あまんじゃく』(早川書房)は殺し屋を主人公とした犯罪小説で、文章がごちゃごちゃしていて読みにくいが(書くべき情報と切り捨てるべき情報の見極めができていない感があり、そのため展開まで実際よりもたついているように感じられてしまう)、慣れてくるとそこそこ面白く読めるようになった。最後まで読んだらどうだろうか。――というところで「読まないのなら早くこっちに回せ」と母に急き立てられ、米村圭伍『おんみつ蜜姫』(新潮社)の序盤を読み始める。ですます調の文体をこれほどユーモラスに操れる作家は数少なく、愉快な展開にひたすら感心。

PLAY  プレイ 嘘 猫 (光文社文庫) おんみつ蜜姫