塩の街

有川浩(2004.02)電撃文庫 ISBN:4840226016 【ライトノベル

 人体が塩の柱と化す奇病(?)に侵された世界の物語。第10回電撃ゲーム大賞受賞作。
 新井素子ひとめあなたに……』やP・D・ジェイムズ『人類の子供たち』などの系譜に連なる世界滅亡小説かと思ったが、途中で別の方向(パニック小説、というのはちょっと違うか)へと針路が変わってしまった。この小説の場合、それが原因でなんとなくありきたりなイメージのまま終わってしまったように思う。楽しく読めたが、全体的には釈然としない。
 まず第一章が独立した物語として構想され、その内容を受けて第二章と第三章が書き継がれ、しかしそのまま続けるのが困難になったために第四章からは別の物語を接木した、という印象を受けた。というのも、第一章、第二章と第三章、第四章以降、の三つのパートの間に温度差が発生しているように思われるからだ。この書き手の個性は前半(第三章まで)のパートに現れていると思うので、その持ち味(感傷的な筆致)を大切にしつつ、あとはそれぞれのパートの温度差を消す技術に習熟して戴きたい。