ジェシカが駆け抜けた七年間について

歌野晶午(2004.02)原書房 ISBN:4562037385 【ミステリ】

 『安達ヶ原の鬼密室』と同様の構成という印象の、軽いトーンの小品。メイン・トリックに何が使用されているかは簡単に見当がつくし、切れ味もそれほど鮮やかとは言い難く、むしろ途中、男性二人の視点を採用したパートにおいて捨て駒のように使用されるトリック(?)のほうが個人的には新鮮に感じられてしまった。前作『葉桜の季節に君を想うということ』と比べ、本格ミステリとしては本書のほうが際立っているという指摘も見掛けたが、内容の面白さでは『葉桜』のほうが上である。