ルピナス探偵団の当惑

津原泰水(2004.03)原書房 ISBN:456203758X 【ミステリ】

 ミッションスクールのルピナス学園に通う吾魚彩子とその仲間たちが三つの事件に挑む連作本格ミステリ講談社X文庫ティーンズハートで上梓された二作品を改稿し、さらに書き下ろしの新作を追加。
 第一話「冷えたピザはいかが」は「犯人はどうして凶行後、嫌いなピザをわざわざ口にして現場を去ったのか」という謎を中心に据えたホワイダニット・ミステリだが、案外平凡な出来で、一点解決に疑問を感じた箇所もある。しかし第二話「ようこそ雪の館へ」において構成美は俄然高まり、伏線を張り巡らせた本格的なパズラーの楽しさを満喫できた。この作品にもある部分に「よく見たら判らないか?」という疑念を差し挟むことはできようが、飽くまで推理ゲームとして、その点も積極的に楽しんでしまうべきだろう。そして第三話「大女優の右手」は、第二話の本格ミステリ的充実度を保ちながらプロットが洗練の一途を辿っていて、これにはちょっと驚いてしまった。鬼面人を驚かすトリックや仕掛けなどは一切盛り込まれていないので、その点だけ見れば地味かも知れないが、伏線や構成を重視するうるさがたの本格ミステリ・ファンなら読んでおいたほうが良いと思う。