エンドコール メッセージ

山之内正文(2002.08)双葉社 ISBN:4575234451 【ミステリ】

 再読。小説推理新人賞受賞作「風の吹かない景色」、受賞第一作でいきなり日本推理作家協会賞(短編部門)の候補になった表題作「エンドコール メッセージ」、ほか二編を収録した期待の新鋭のデビュー作品集。
 巧みな構成やドンデン返しの切れ味にセンスを感じる。ミステリとしての構成と人間ドラマを結びつける手際にも、ほとんど危なげなところは見られない。表題作および「明日に囁く声」の二編は設定と展開に凝り過ぎと思わなくもないが、それがまた嬉しいと感じさせるのがミステリのミステリたる所以だろう。重いテーマを内包した作品の中、一編だけ軽いタッチで描かれた「便利屋稼業 猫捜索顛末記」に最も愛着を感じるが(綺麗に纏まった〈日常の謎〉ミステリの秀作)、客観的に見るならデビュー作「風の吹かない景色」の完成度がもっとも高く、結末に登場する一通の手紙の中身がとりわけ心に残る。
 この作品集を刊行して以降、山之内正文はたぶんまったく実作を発表していないと思うが、一日も早い復帰を望む。