金融探偵

池井戸潤(2004.06)徳間書店 ISBN:4198618712 【ミステリ】 勤めていた銀行が倒産し、不況下で再就職もままならない31歳の大原次郎。住んでいるアパートの大家が巻き込まれた事件がきっかけとなって、探偵家業に精を出すことになる。全七編収録のシリーズ作…

スキマスイッチ『夏雲ノイズ』をぼんやり聞いていて、 それならいっそ君の中に僕の螺旋を残せばよかったって (1.螺旋) これって二重螺旋のことですよね。 ……鬼畜だ(喜)

いい感じで仕事に興味が持てなくなっているので、こういう時こそ更新頻度を上げなければ。 最近読んだ本はデイヴィッド・フルマー『快楽通りの悪魔』(新潮文庫)、翔田寛『消えた山高帽子 チャールズ・ワーグマンの事件簿』(東京創元社/ミステリ・フロン…

百年佳約

村田喜代子(2004.07)講談社 ISBN:4062124211 【文芸/エンタテインメント】 第50回芸術選奨文部大臣賞受賞作『龍秘御天歌』(文藝春秋)待望の続編。 秀吉の朝鮮出兵の際に連行され、九州に住み着いた陶工たちの中心存在である百婆が、夫の葬式を朝鮮式で…

消えた山高帽子 チャールズ・ワーグマンの事件簿

翔田寛(2004.06)東京創元社 ISBN:4488017045 【ミステリ】 明治六年、横浜居留地に名探偵登場。幕末に東禅寺事件*1に巻き込まれ、明治に入ってから〈ジャパン・パンチ〉を創刊した実在の英国人新聞記者、チャールズ・ワーグマンを探偵役に据えた連作ミステ…

カタブツ

沢村凛(2004.07)講談社 ISBN:4062124017 【ノベル/ミステリ】 〈ミステリーの新世界〉と銘打ってはあるけれど、伊坂幸太郎『チルドレン』より更にミステリ味は薄いので、そういった期待は過度に抱かないほうが賢明だろう。六作を収録した作品集で、先日読…

パズラー

西澤保彦(2004.06)集英社 ISBN:4087747042 【ミステリ】 著者が今までに執筆したノンシリーズのパズラー六編を一冊に纏めた作品集。謎と論理のエンタテインメント。未読作品は「アリバイ・ジ・アンビバレンス」しか無く、大半が再読ということになったけれ…

①翔田寛『消えた山高帽子 チャールズ・ワーグマンの事件簿』(東京創元社)は叢書〈ミステリ・フロンティア〉中、最もミステリとして充実した作品だと思う。 ②小野寺健編訳『20世紀イギリス短編選(上)』(岩波文庫)が面白くて仕方がない。とりわけヴァー…

野沢尚

小説家としての知名度が脚本家としての知名度を超えることはなかったと思うが、私見では、野沢尚は小説執筆においてこそ真価を発揮した才能である。『眠れぬ夜を抱いて』(幻冬舎文庫)は意表を衝いた構成と明確にして力強いテーマ把握で斬新な作品たり得て…

『ブラックランド・ファンタジア』定金伸治(2004.06)集英社スーパーダッシュ文庫 ISBN:408630189X

懐かしい作家たち

マイケル・グルーバーなる新人作家の『夜の回帰線(上下)』が新潮文庫から刊行されていた。ハメット賞受賞作らしいが、まったく興味を惹かない内容であることよ……と思いつつ訳者(田口俊樹)のあとがきを読んでいて仰天。なんとこの作家、ロバート・K・タ…

『消えた山高帽子 チャールズ・ワーグマンの事件簿』翔田寛(2004.06)東京創元社 ISBN:4488017045 『銀輪の覇者』斎藤純(2004.06)早川書房 ISBN:4152085622 明治六年の横浜居留地を舞台とした新鋭の連作と、昭和九年を舞台とした中堅作家の自転車冒険小説…

ラー

高野史緒(2004.05)早川書房 ISBN:4152085711 【SF】 ピラミッドの謎を解明するべく、タイムマシンに乗って現代人ジェディは紀元前のエジプトに降り立つ。 考古学に興味を持つ現代人が紀元前のエジプトにタイムスリップし、そこで現代的知識を披露して「…

『誰でもない男の裁判』A・H・Z・カー(2004.06)晶文社 ISBN:4794927428 『傷痕』アラン・ラッセル(2004.06)ハヤカワ文庫NV ISBN:415041064X 『眠る骨』桐生典子(2004.06)新潮社 ISBN:4104682012 「アラン・ラッセルって誰だっけ」としばらく考え…

望月諒子『殺人者』(集英社文庫)を読了。

星新一『祖父・小金井良精の記(上)』(河出文庫)を読了。何と言っても文章の読み心地が素晴らしい。慌てて下巻を読み始めるのが勿体無いような気がしたので、最近の積読本を先に片付けることにし、ティエリー・ジョンケ『蜘蛛の微笑』(ハヤカワ・ミステ…

妄想代理人

梅津裕一・著/今敏・原作(2004.05)角川ホラー文庫 ISBN:4044250057 【ホラー】 既に崩壊している家族が、形骸すら残さず崩れ去るまでを描く。 WOWOWで放送されたアニメ・シリーズのオリジナル・ストーリー。梅津裕一らしさがよく現れた作品で、どち…

殺しの接吻

ウィリアム・ゴールドマン(2004.06)ハヤカワ・ミステリ ISBN:4150017530 【ミステリ】 才人が描く、刑事と絞殺魔の不思議な関係。 まさか今になって読めるとは思わなかった、ゴールドマン初期のスリラー。才人らしい意地の悪い(褒め言葉)展開にニヤニヤ…

最愛の小川洋子作品『沈黙博物館』が文庫化されました(ちくま文庫)。ミステリとして勧めるには無理があると思いますが、ミステリファンが最初に読む小川洋子作品という観点からも、これが最高のセレクトなのではないかと思います。あるいは中公文庫『寡黙…

また熱を出しました。いったい今年何度目なのか。 蒲柳の質という柄でもないのだけれど、気分はすっかり弱気モード。その最中に某俳優の自殺未遂(?)ニュースを目にして「健康な奴が命を粗末にするな!」と妙な怒りに駆られ、結果的にそれが良かったのか仕…

5月15日、18日、25日、29日の日記を追加しました。

みんな誰かを殺したい

射逆裕二*1(2004.05)角川書店 ISBN:404873539X 【ミステリ】 みんな誰かを殺したい。そして実行に移した彼らの運命は――。第24回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作。 作者には失礼だが、意外に面白かった。今年の横溝正史賞は豊作だったと言えるのではない…

更新しない間は吉川良太郎『ギャングスターウォーカーズ』(光文社カッパ・ノベルス)、同じく吉川良太郎『ボーイソプラノ』(徳間書店)、伊坂幸太郎『チルドレン』(講談社)、青井夏海『陽だまりの迷宮』(ハルキ文庫)、村崎友『風の歌、星の口笛』(角…

風の歌、星の口笛

村崎友(2004.05)角川書店 ISBN:4048735403 【SF/ミステリ】 異変を起こし始めた世界を調査する探偵。二十五光年の距離を越えて惑星へ降り立った研究員。記憶の中に存在している恋人を追い求める若者。三つのパートが織り成す物語とは。第24回横溝正史ミ…

チルドレン

伊坂幸太郎(2004.05)講談社 ISBN:4062124424 【ノベル/ミステリ】 作者曰く――短編集のふりをした長編小説です。 苦言から書いてしまおう。五本の短編を繋ぐ影の主役・陣内はきわめて一般受けしそうなキャラクターで、気取らず適度にガサツで表面上は無茶…

誰もわたしを倒せない

伯方雪日(2004.05)東京創元社 ISBN:4488017053 【ミステリ】 これが初の著書となる新鋭による、格闘技と本格ミステリのコラボレーション。〈ミステリ・フロンティア〉第五回配本。 これまでの〈ミステリ・フロンティア〉既刊とはまた違った意味で、まった…

探偵伯爵と僕

森博嗣(2004.04)講談社 ISBN:4062705702 【ミステリ】 〈ミステリーランド〉第四回配本中の一冊。His name is Earl. 森博嗣は人間の思考や意志を(善悪の概念とは関係無しに)美しく描くことのできる稀な作家だと思う。本書にもその長所は現れている、とい…

『臨場』横山秀夫(2004.04)光文社 ISBN:4334924298 『探偵伯爵と僕』森博嗣(2004.04)講談社 ISBN:4062705702 『いつか、ふたりは二匹』西澤保彦(2004.04)講談社 ISBN:4062705710 『硝子のハンマー』貴志祐介(2004.04)角川書店 ISBN:4048735292 『孤…

臨場

横山秀夫(2004.04)光文社 ISBN:4334924298 【ミステリ】 その能力の高さ故に〈終身検視官〉と称される捜査一課調査官・倉石の事件簿。八編収録。 いやはや面白い。現時点における著者の最高傑作『第三の時効』に次ぐ完成度を有していると言えるだろう(「…

4月22日、23日、30日、5月1日、2日の日記を追加。次の更新時には森博嗣『探偵伯爵と僕』(講談社/ミステリーランド)の感想を書きたいと思うが、それにしても『フラワー・オブ・ライフ 1』(よしながふみ/新書館)が面白く、感想書きどころではない。…