懐かしい作家たち

 マイケル・グルーバーなる新人作家の『夜の回帰線(上下)』が新潮文庫から刊行されていた。ハメット賞受賞作らしいが、まったく興味を惹かない内容であることよ……と思いつつ訳者(田口俊樹)のあとがきを読んでいて仰天。なんとこの作家、ロバート・K・タネンボームのゴーストライターだったというのだ。ということは、印象に残っている力作『検事補カープの怒り』(二見文庫)を書いたのは彼なのか。だったら買わなきゃなあ……というより、タネンボームが自分で小説を書いていなかったことのほうに驚いてしまった。
 それはともかく、最近妙に、十数年前*1に読んでいた(そして最近すっかり名前を聞かなくなっていた)ミステリ作家の名前を目にすることが多い。先日話題にしたアラン・ラッセルとか、先月新潮文庫から翻訳が刊行されたトレヴェニアンとか。ウィリアム・ゴールドマンも自分にとっては同じような頃に読んでいた作家だし、ケム・ナンの『源にふれろ』が文庫化されるというニュースにも意表を衝かれた。去年いきなりトニー・フェンリーの作品が翻訳されたときも驚いたなあ……*2

*1:自分で計算して絶句。もうそんな前になるのか!

*2:『壁のなかで眠る男』新潮文庫。フェンリーはゲイ・ミステリの『おかしな奴が多すぎる』(扶桑社ミステリー文庫)と『首吊りクロゼット』(角川文庫)で注目された女性作家。