殺しの接吻

ウィリアム・ゴールドマン(2004.06)ハヤカワ・ミステリ ISBN:4150017530 【ミステリ】

 才人が描く、刑事と絞殺魔の不思議な関係。
 まさか今になって読めるとは思わなかった、ゴールドマン初期のスリラー。才人らしい意地の悪い(褒め言葉)展開にニヤニヤしながら読み進んだが、ある人物の死を契機にシリアスなムードが俄然高まり、独特の余韻を残して物語は終了する(陰鬱な闇に静かに溶け込んでゆくような終わり方が素晴らしい)。本書の重要なモティーフは「母親」であるが、親子関係を描いていながらウェットな感傷をまったくもたらさないドライな描き方に感心させられた。すっきりした、無駄のない小品。月に一冊、こういう作品が読めると嬉しいのだが。