殊能将之『キマイラの新しい城』(講談社ノベルス)読了。ミステリ・コメディ*1の快作。私見では、殊能作品においてミステリはおもちゃにされるだけであり、その弄び方に中途半端な批評性が入ってくるから正直言って彼の作風は好みではないのだけれど、あからさまにミステリ的にやる気が無く、その分コメディ要素が強くなっているこの作品は楽しめた。ロポンギルズでのドタバタや、苦悩する刑事像にニヤニヤ。但し、ジョン・ディクスン・カー『ビロードの悪魔』のタイトルをわざわざ挙げ、本格ミステリ・マニアとの間に隠微な共犯関係を築こうとする姿勢は(昔は好きだったが)今は姑息に感じられたりもする*2
 続いて福澤徹三の新作長編『壊れるもの』(幻冬舎)を手に取ったのだが、エリザベス・ボウエンの作品集を読んでいる所為かどうも感心しないので、一時中断して清涼院流水の新作『とくまでやる』(徳間デュアル文庫)を読み始める。流水版『千日の瑠璃』*3? 清涼院作品を読むのは実に『ジョーカー』以来。

とくまでやる (徳間デュアル文庫)

*1:コメディ・ミステリではない。断じて。

*2:つまり、『ビロードの悪魔』の結末を知っていないと笑えないという辺りが隠微な共犯関係と言いたいわけです。

*3:丸山健二著。文春文庫、上下巻。