伴野朗死去

 つい先程まで知らなかった。1976年『五十万年の死角』で第22回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー、84年には連作短編『傷ついた野獣』で日本推理作家協会賞を受賞。最後に読んだ伴野の新作は『白公館の少女』(新潮社/新潮ミステリー倶楽部)か『上海発 奪回指令』(早川書房/ハヤカワミステリワールド)のどちらかだったが、その頃には昔日の輝きを既に失っている感があった。新人賞の選考委員としても、その眼力はさして感心できるものではなかったが、それでも初期の『五十万年の死角』(講談社文庫)や『三十三時間』(集英社文庫)は荒削りなプロットが却って魅力を放つ快作だったと思う。伴野にとっては異色作だった、グルメ探偵・陳展望が活躍する『殺意の複合』(講談社文庫)も印象に残っている。冒険活劇と謎解きを組み合わせた初期作品は、いま読んでも面白いのではなかろうか。
 門外漢なので詳述はしないが、歴史学者網野善彦も永眠。隆慶一郎の読者なら強い思い入れを持つ名前である筈だ。享年76歳なので早世とは言えないが、それでもその死はきわめて惜しい。