幽霊には微笑を、生者には花束を

飛田甲(2004.02)ファミ通文庫 ISBN:4757717032 【ライトノベル/ミステリ】

 殺される瞬間の記憶しか持たない幽霊の少女のために、少年は真相を推理する。
 一言で表すなら、硬質なハートウォーミング・ストーリー、というところか。冒頭から結末まで一気に読ませるし、キャラクターの造形も悪くないが、ミステリとしては意外性を狙うあまり、却って真相に説得力が乏しくなってしまったという印象を受ける。幾重にもファンタジー的要素が積み重ねられた上で成り立っている真相のため、伏線は張られているものの、これは推理レベルでは解き得ない解答のように思われた(幽霊を認識できる条件が設定してあるところは面白いが)。但し、あまりにベタすぎて最早ギャグにしかならないようなシーンをラストで堂々と描き上げた度胸は見事。この度胸と(良い意味で)硬質な文章に期待して、次作を待ちたい。