Kar-MAN 業の獣

梅津裕一(2002.03)角川スニーカー文庫 ISBN:4044250030 【ライトノベル

 この科学が発達した世の中に、平然と魔法の使用によって国が成り立っているマナラ共和国。殺人の罪と引き換えに、スパイとしてマナラへの潜入を命じられた主人公は、ろくでもない連中と知り合ったために共和国革命に巻き込まれ――
 次巻への伏線が大量に張られたまま中絶した冒険ファンタジー。この作風でライトノベル読者から支持を得ることは非常に難しいだろうとは思うものの、誰が裏切り者になってもまったく不思議ではない――つまり、明らかに人間の善意や団結力など信じていない作者の世界観は奇妙な魅力を放ち、続きを読んでみたかったと思わせる。笑いを盛り込んでいるのも却って毒々しさを盛り上げ、しかしそんなに悪趣味ではなく、不快でもない。この作者の前作『アザゼルの鎖』(角川スニーカー文庫)を読んだ時も感じたが、この作者、一般文芸のほうに活路を求めたほうが良いのではないか。
 なお、どうでもいい話だが、猿が見えるという冒頭のくだりは一瞬、竹本健治のオマージュかと思わせた。