氷菓

米澤穂信(2001.11)角川スニーカー文庫 ISBN:4044271011 【ミステリ/ライトノベル

 神山高校古典部に入部した一年生四人が、文集《氷菓》創刊号の謎に挑む。第5回角川学園小説大賞奨励賞受賞作。
 前半はさながら一問一答形式の如く、小さな謎が提示され、探偵役によってその真相が即座に提示されるというパターンの繰り返しで成り立っている。謎も真相もスケールが小さいので、若干の物足りなさを感じながら読み進めるが、最後まで読むと決してそれだけの作品ではなかったことが判る。最終的に解かれる謎は長編のスケールを必要とするもので、それを解き明かすための鍵はすべて前半に鏤められているのだ。極端なことを言えば、前半の複数の謎解きは、最大の謎に辿り着くまでの場繋ぎとして用意されたものに過ぎない。しかし、それらは探偵役の少年をはじめとする登場人物の描写や、最後の謎解きと密接に絡み合っていて、単なる場繋ぎには終わらせていない。隙の無い構成と評価できる。
 勿論、本書が長編版〈日常の謎〉であることや、名探偵の一人称で書かれていることなど、複数の意味できわめて珍しい作品であることも忘れてはならない。ミステリファンなら読む価値のある力作だろう。