ライトノベル読者への道程

 ちょうど一年前、前回の日本ファンタジーノベル大賞受賞作である西崎憲の『世界の果ての庭』(新潮社)を読んで、こういったメタフィクション、ひいては野心的な現代文学に対する興味が自分の中から消滅してしまっていることに気づき、愕然とした覚えがある。今では、あれほど好きだったジョン・ファウルズの『マゴット』(国書刊行会)やイタロ・カルヴィーノの諸作についても、一線を置いて考えてしまうようになった。西崎ショック――と言ってしまうのは西崎氏に対して失礼だが――の前後に読んだラドヤード・キプリングの『少年キム』(晶文社)で、「ああ、こういう話をもっと読みたいな」と感じ、少年文学や児童文学方面にも手を伸ばしたのだが、これといったものが見つからない。仕方が無いのでライトノベル方面に手を伸ばすようになったのだが、正直言って一般文芸でデビューしている新人たちよりも数段筆力が上だったので再び愕然とした。そんなわけで定期的にライトノベルをチェックするようになったのである。
 ということでKさん、質問に対する回答になりましたでしょうか。