中島みゆき 夜会VOL.13 24時着0時発

 二幕構成。新婚旅行先で夫が濡れ衣を着せられ死刑宣告を受けた上、自身も法廷侮辱罪で国外退去を命ぜられてしまう第一幕と、メビウスの環のようなホテルを舞台とした幻想的な第二幕から成る。ほぼ全編が台詞ではなく曲(つまり歌詞)で構成されている上、内容が複雑なので全体像を把握できなかった観客も大勢いたに違いないが――実際、帰り際に「結局どういうことだったの?」という声が後ろから聞こえてきた――、中心アイデアはSFおよび新本格ミステリを読み慣れている読者には「ああ、あれか」と簡単に納得できるネタだろう。但しそのネタが明確になるのは二幕の後半なので、千秋楽までは伏せておくのが礼儀か。個人的には、まさか中島みゆきが夜会でこのネタを扱うとは予想だにしていなかったので、ネタに気づいた瞬間はかなり驚いた。幕開けの「サヨナラ・コンニチハ」は物語の重要なヒントになっていたように思うので、これから観るひとは心して聞いておくことをお勧めする。
 そして何より凄かったのは大道具。一昨年の《ウィンターガーデン》もかなりの大仕掛けだったが、今年のセットには圧倒された。ふと谷山浩子の小説(『ユキのバースデイシアター』や『悲しみの時計少女』のような、ちょっとトリッキーな雰囲気の作品)を連想させるような第二幕のシュールなストーリーと、それを目の前で実現化させてしまう大掛かりなセットの転換は圧巻。そういう訳で、第一幕の時点では多少の不安も感じたが、終わってみるとかなり満足できた。
 曲の中では「ミラージュ・ホテル」がとりわけ好み。