ロマンス小説の七日間

三浦しをん(2003.11)角川文庫 ISBN:4043736010 【エンタテインメント】

 突然会社を辞めてきた彼。骨折した父。ベタベタなロマンス小説を翻訳中のあかりは、私生活のトラブルに心を乱され、ついには小説を勝手に改竄し始めた!
 こういったタイプの小説は、だいたい以下の二点のような展開になると面白くなる。

1 改竄は留まるところを知らず、想像を絶する展開に雪崩れ込む。
2 小説と現実が、やがて奇妙な融合を遂げてゆく。

 本書の場合は1の方向性を辿るが、改竄された小説が八方破れな展開を見せるということはなく、それなりにきちんと纏まった小説として収束する。個人的にはその几帳面さが逆に物足りなく感じられ、むしろ現実に進行している恋愛話のほうに興味を引かれたが、本書はもともと「恋愛小説を」という依頼を受けて書かれた作品らしいので、ある意味当然のことかも知れない。しかし、わざわざメタフィクション的な設定を導入したのだから、もう少し溌剌とした内容になっても良かったのでは、と無いものねだりをしてしまいたくなる。
 同じ作者の小説なら、『月魚』(角川書店)や『白蛇島』(同)など、もっとフィクションの度合が強い作品のほうが好み。