ペロー・ザ・キャット全仕事

吉川良太郎(2001.05)徳間書店 ISBN:4198613494 【SF】

 第2回日本SF新人賞受賞作。再読。
 架空都市〈パパ・フラノ〉を舞台に、ふとしたことから猫に憑依できるハイテクを手に入れた高等遊民ペローが巻き込まれる陰謀劇を描いた長編。
 スタイリッシュな文体を所有し、キャラクターの造形力も水準以上でありながら、なぜか内容は退屈に感じられてしまうという困った特徴を持つ作家(吉川と双璧なのが浅暮三文)。弱点は頻繁に登場するアクションシーンが盛り上がらない点で、独特の文体が却ってアクションのスピーディーさを殺しているように思われた。おそらくはギャングと、ギャングに立ち向かう自由人の活躍を描きたいのだろうが、資質的には緻密な謀略物か本格ミステリのほうが向いているかも知れない。陰謀劇の構図が見えてくると、きちんと面白くなるので。
 極めて好みに合う作風である筈なだけに、歯痒い。

※『ビリー・ザ・キッド全仕事』マイケル・オンダーチェ(1994.07)国書刊行会